過剰な期待をしない
- 大井
- 放っておくっていう育て方もあるんですね(笑)。なんでそういう風にしようと思ったんですか?
- 鈴木
- 嫁は完全に分かってますけど、面倒臭いんです。
- 大井
- あやしたりするのが?
- 鈴木
- 子供のために何かするっていうのが面倒臭いから。ジュースを欲しがったからって、いちいち持って来なきゃいけないっていう手間がものすっごい面倒なんです。
- 大井
- ただ、うるささを我慢しとけばって。
- 鈴木
- そうですね。自分の感情を殺すようになったら言うこと聞くようになったんです。
- 大井
- じゃあ、「お片付けしろ」って言ってもしないときは?
- 鈴木
- 僕以外の人間が言ってもまったくしないですけど、僕が言うと嫌々ながら片付け始めますね。どれだけ自分が片付けを嫌いなのかを延々言いながら片付けるんです。「おばけとか怪人を見るのと同じくらい嫌なんだよ」って言いながら(笑)。「うん、そうか」って頷きながら僕はずっと見てるだけ。で、ちゃんと出来たときだけ褒める。それを息子も分かってるから、ちゃんとやるんだと思うんですよ。実際は僕がただ面倒臭いってだけなんですけどね……。嫁はそれも分かってますね。
- 大井
- アイツ、またサボってんなって(笑)。
- 鈴木
- そうそう(笑)。で、嫁に言われてから初めて、僕はゆっくり動くんです。
- 大井
- それはもう鈴木さんのオリジナルなんですね。
- 鈴木
- オリジナルですね。たぶん、僕の母親の育て方に近いんですよね。うちは自営業なんで(注:2)、母親がほとんどいなかったですから、なにもしてもらった記憶がないんですよ。だから僕も、おむつを替えるタイミングが分からなくて、嫁まかせになっちゃうんですよね。
- 大井
- おしっこしてるなって思いながらも。
- 鈴木
- 面倒臭い。今ちょうどトイレを教えてる時期なんですけど、とにかく面倒臭いから気付かないフリとかするんですね。すると嫁が臭いで気付いて僕にキレるんです。「うんこしてるでしょ、替えなさいよ!」って言って僕にキレるんです。
- 大井
- 言われるまでは基本的に動かない(笑)。
- 鈴木
- そうですね。あと僕は、子供に過剰な期待をしてないんですよ。「どうせ出来ないだろう、おまえなんて」っていう論点から入っていってるんで(笑)。
- 大井
- 「おまえなんて」ってヒドいですね(笑)。
- 鈴木
- でも過剰な期待をしちゃうと、プレッシャーに弱い子になるらしいんですよ。まあ僕の場合はたまたまですけど、これ大井さんもやったほうがいいですよ。
- 大井
- 子供自身、出来ないだろうなって思いながらやらせるってことですか?
- 鈴木
- そうです。それで出来たら自信がつくし、出来なかったとしてもやっぱりなって思って終わりですから。
- 大井
- 出来なくても怒らないんですか?
- 鈴木
- 怒らないです。その代わり、出来たときにすごく褒めるのと、常に俺はおまえの味方だ!ってことを植え付けておくことですね。そうすれば、子供は安心してプレッシャーを感じずに出来るようになるんですって。
- 大井
- それはどこの情報なんですか。
- 鈴木
- 古舘伊知郎さんです(笑)。だから古舘さんのお子さんを見て下さい、すごいでしょ?
- 大井
- 知らないっすよ。まったく頭に浮かんでこないんですけど。
- 鈴木
- まあ、思いっきり失敗してもいいんだよっていう考えです。僕は結構本番でガチガチになるタイプなんで。
- 大井
- じゃあ、親に「出来るよね」って言われてきたってことですね(笑)。
- 鈴木
- 「拓はすごいから出来るよね!」って(笑)。だから、いまだに本番でガチガチですよ。
親の気持ちが今になって分かる
- 大井
- 自分の息子が芸人になりたいって言ったらどうするんですか?
- 鈴木
- もうこれは絶対やらせないですね。
- 大井
- そうなんですか。なんでですか?
- 鈴木
- 人から聞いた話ですけど、二代目は初代より必ず悪くなって、三代目でまた良くなるっていう。だからその理論で言うとですね、徳川家でもそうですけど、二代目の秀忠がダメで三代目の家光で一気にいくっていう。すごかったのは貴乃花ぐらいらしいですよ。だから、芸人はダメだなと。これを塚っちゃんに言ったら「おまえもすごくないで」って。「なんでおまえが徳川家康やねん!」って(笑)。
- 大井
- それでもなりたい!って言ったらどうするんですか? やめろって言うんですか?
- 鈴木
- 絶対やめさす方向で考えてますね。
- 大井
- でも「NSCに行きたいんだよ」とか言うかもしれないじゃないですか。
- 鈴木
- だから、まず夢と希望を砕くために売れてない芸人さんをいっぱい家に連れて来て、どんだけ辛い生活を送っているかを見せようかなと思ってるんですよ(笑)。
- 大井
- 植え付けていくんですね。親父は飯食えてるし、みたいになっちゃうとね。
- 鈴木
- そうです。誰もがそんな売れたりするわけじゃないだろうし、後々僕もダメになってるかもしれないですし。だから、売れてない芸人さんか、後々の僕をいっぱい見せようかなと思ってるんです(笑)。
- 大井
- 芸人以外だったらいいんですか?
- 鈴木
- ミュージシャンもダメですね。
- 大井
- 劇団員みたいなのもあるじゃないですか。
- 鈴木
- あ~、俳優はダメですね。芸能人はもうダメですね。僕が成功をして……孫ならいいかなと。
- 大井
- じゃあ、将来的には逆にどうなって欲しいですか? こうなってほしいなっていうビジョンはあるんですか?
- 鈴木
- ビジョンはね、なんとか公務員とか手堅い仕事に就いて欲しい。親の気持ちが今になって分かるというか。
- 大井
- そんなに博打に出なくていいっていう。
- 鈴木
- そうですね。若い頃は博打に出なきゃダメだろうって思っていたところもありましたけど、今は公務員ですね。最悪、海外で暮らしていて欲しいと思ってるくらいなんです。
- 大井
- なんですか、それ(笑)。
- 鈴木
- 僕の情報とかも一切見ずに過ごせるでしょう。
- 大井
- 見せたくないんですか?
- 鈴木
- 見せたくないというか、僕を見て育っちゃったら、「イケんじゃないの、俺も」みたいに思われちゃうとキツイんで(笑)。
- 大井
- でも、すごい尊敬されてるから、「俺も親父みたいになりたい」って言うかもしれないですよ。
- 鈴木
- そうなんですよ。それは恐いなと思ってます。
- 大井
- 芸人の子供って、日本の公立だとイジメられるかもしれないからって、アメリカンスクールに入れたりしますもんね。
- 鈴木
- 僕もそれがすんごい心配になって、アメリカンスクールか、芸能人の子供ばっかり行くような学校に入れようかなって考えていたんですよ。でも、ある番組で○○○○さんと話したときに、「お子さんはどこの学校に通わせてるんですか?」って聞いたら、普通の公立に通わせてるって。「大丈夫なんですか?」って聞いたらポカンとしてるんですよ。「イジメられたり苦労するんじゃないですか」って言ったら、「子供なんて苦労させた方がええやん」って。うわっと思いましたけど、それはそうかと。○○○○さんは普通の子とも一緒に生活させたいし、イジメられないように育てている、と。もしイジメられたとしても次からそうならないように育てたいという言葉を聞いて、これだ!って。興奮冷めらやぬ状態で家に帰って、「うちも公立の学校に通わせるぞ」と嫁に言ったら、嫁が一言。「あんたと○○○○さんじゃ、キャラクターから何から全然違うだろ!」って(笑)。だからダメ、うちはもう私立ですね。全然違うんだもん。
- 大井
- でもそこを考え出したら、仕事のことも多少考えちゃうんじゃないですか?
- 鈴木
- 考えますね~。だから、(山崎)邦正さんが必死に勉強して大学行って(注:3)、「父さんはこれだけがんばってるんだ」っていうことを子供に見せてるらしいですよ。それを聞いちゃうと、親も努力し続けなきゃいけないのかなって思いますけどね。あとね、子供にはケチったらダメだ、と。テレビで見たんですけど、ホンジャマカの石塚さんはテレビの中で池とかに落っこってる姿を子供に見せて、「これでおまえのおもちゃが3個買えるんだよ」って言うみたいです。そうすると父親がそういう仕事をしてることに対しても見え方が変わってくるというか。
- 大井
- 「ありがとう、お父さん」と。
- 鈴木
- そうなんです。だから僕も、それをまんまやろうかなと(笑)。「今、お父さんは頭引っぱたかれたけど、頭引っぱたかれるからおまえはご飯を食べれるんだぞ」って。
- 大井
- 子供としてはビックリしますよね。家では強い鈴木さんじゃないですか。テレビだと全然違うんですもんね(笑)。その辺のギャップを3才だとまだ分からないですよ。
- 鈴木
- だからもう海外行ってくんねーかなと。本気で頼んだんですよ、嫁に。「海外行ってくんねーか」と。アメリカだと金も心配だし、タイかフィリピンかどっか行ってくれって(笑)。
- 大井
- 安くても生活出来る国へ(笑)。
- 鈴木
- いや、ほんとに。やっぱり不安ですもん、子供の教育は。
- 大井
- そうですよね、大人になったら「お父さんはすごいんだよ」じゃ、通用しなくなってきますもんね。
- 鈴木
- 想像しただけで恐いですね~。