嘘はバンバンついていい
- 大井
- 逆もあるじゃないですか、イジメられるのもそうですけど、悪くなっちゃったらどうしようみたいな。
- 鈴木
- ああ~。
- 大井
- そういうのはあんまり心配しないですか?
- 鈴木
- そこはね、心配してないです。僕の子供だから悪くなるわけがないっていうか。言ってることがさっきとまったく逆になるんですけど(笑)。すでにうちの子供はビビリ症なんですよ。なにをやってもすぐに怖がるし、僕の顔色を伺うんでこれじゃ悪くならないだろうと。
- 大井
- 反抗期で「親父ぶっ殺すぞ」的なのも面倒臭くないですか。
- 鈴木
- 諦めずに気長にやらなきゃいけないとかって言いますもんね。だから、それを笑いとかが救ってくれりゃいいけどなっていう(笑)。全部冗談で返してくれたらいいのになっていう思いで育てようと思ってるんです。
- 大井
- ヤンキーとかっていう悪さもあるけど、要は普通の家で育ったんだけど、ある日突然お父さん殺しちゃったみたいなのもあるじゃないですか。真面目の延長というか根暗の延長みたいな。そういうの恐くないですか? 仲良かったのにみたいな。
- 鈴木
- うちの子供はそういう風にはならないですよ。
- 大井
- 何でですか!?
- 鈴木
- 理由はないです(笑)。
- 大井
- うちの子は大丈夫だろうって。みんな思ってますよ。
- 鈴木
- うちね、嘘をついちゃいけない家庭にしようとも思ってないんです。嘘はバンバンついていい。そういう風にしときゃ、あんまり衝突もなくなるかなって思うんですよ。最終的には笑いになりゃ、別にどんな嘘ついたっていいよって、すり込ませてるんです。そしたら、嫁にしこたま怒られましたけど。
- 大井
- 「嘘をついていいわけないじゃない」って。
- 鈴木
- そうです、そうです。子供に言ってるのは「人を幸せにする嘘ならついていいよ」と。具体例じゃないですけど、死ぬ間際の人に「本当はあなたのことが嫌いでした」って言う真実よりも、「好きでした」っていう嘘のほうが幸せになるかなと思って、それを力説してたら嫁には「誰が死ぬんだ、おまえが死ね」って(笑)。
- 大井
- 自分の家庭だったらそうならないだろうっていう自信はあるんですね。
- 鈴木
- そうですね。殺されたり僕が殺したりっていうのはないんじゃないかなって思ってますね。理由はないですけど(笑)。コイツに殺されるかもって思いながら、育てる人もいないですもん。
- 大井
- たとえば、普通は洋服を買うときに自分で選んで買うじゃないですか。だけど、息子が自分の洋服も選べなくて、たぶん世間からダセー奴だって思われてるんだろうなっていうのも寂しいんですよ。お母さんが買ってきた洋服を着てるんだろうな、コイツっていう人いるじゃないですか。
- 鈴木
- いますね(笑)。
- 大井
- それはどうやって育てたらいいか分かんないですよね。
- 鈴木
- でも、なかなかそうはならないんじゃないですか(笑)。大井さんの奥さん、そういう人じゃないですよね? それだったら、まずなんないんじゃないですかね。でも子供って、ちょっとビビらすと顔色伺ったりするんで、ある程度怒ることが重要かなと思ってるんですよね。
- 大井
- 甘やかすんじゃなくて。
- 鈴木
- なんでも褒めると自慢して調子に乗っちゃうから、僕はあんまり褒め過ぎないですし、かといって怒らないように……。このバランスが難しいですけど、よく怒っちゃダメだっていうじゃないですか。僕はああいう子育て論が空気の読めねえ奴をどんどん作ってると思うんですよね。殴っちゃいけないって言うけど、ある程度の恐怖を親が植え付けておかないとダメだと思うわけですよ。小さいうちに教えておけば、まわりの状況が把握できるようになって、ビクビクしながらでもなんとかやっていけるだろうなと思うんです。
- 大井
- ビクビクした子に育てたいんですか(笑)?
- 鈴木
- あまりビクビクしててもしょうがないですけど、ある程度のビクビクは必要だなと(笑)。空気を読めないのが一番の悪じゃないですか、この世界にいると。
Text_竹村真奈