俺の子どもの頃と比べたら、すごい贅沢だと思う
- 大井
- 仕事してるときに、「これをやったら娘がイジメられるな」とか思わないですか?
- 設楽
- まだ幼稚園を出るまではあんまり考えなかったけど、これが小学校に上がってくるとどうかなって。
- 大井
- そうですよね。今は自慢のお父さんなんですもんね(笑)。
- 設楽
- うん、まだね(笑)。
- 大井
- でもそんなに考えないですよね、芸人だったら。
- 設楽
- いや、もうちょっと大きくなってから、これ言うとイヤがるだろうなとか考えるかもしれない。
- 大井
- でも、テレビとかであんまり娘さんの話しないですもんね。
- 設楽
- そうですね、改めて聞かれなければ。
- 大井
- もし、娘さんがイジメられたらどうしますか?
- 設楽
- ヤバい。どうしよう? 可哀想だなあ。もしわかったらとりあえず事情を聞いて、「休んじゃえば?」って。「行かなくていいよ、別に」って言う。
- 大井
- ほんとに行かなくなったらどうします?
- 設楽
- ああ、こんなになっちゃったって(笑)。
- 大井
- 何年後に言うんですか?
- 設楽
- 30年後くらいに。でも幼稚園とかだと、女の子はとくに仲間に入れる入れないが男の子よりすごいんですって。「○○ちゃんはダメ!」とか。
- 大井
- 幼稚園ならまだ可愛いもんかもしれないですけど、もう少し大きくなって、イジメっ子になっててもイヤじゃないですか。
- 設楽
- イジメっ子もイヤだなあ。ちょっとこれはヤバいって思ったら、一回ちゃんと話すことが必要なんだろうなって思うけど。ぶっちゃけ俺らが学生の頃とかもあったし、俺はそこまでじゃないけど、どっちかっていうとイジメるほうだったから(笑)。
- 大井
- そういうのって、親としてはどうにかしたいと思うけど、自分たちの経験で言うと親が出てきて何とかなった試しはないじゃないですか。
- 設楽
- う~ん、どうにかねえ。自分で乗り越えなきゃいけないことはいっぱいあるしね。事情を聞いて、こういう風にしたほうがいいとかアドバイスはできてもねぇ。俺なんか田舎者だからあれだけど、娘はちょっと行ったら渋谷のセンター街とか、新宿とか夜中も24時間店が開いてる環境でしょ。不良になっちゃうんじゃないかと思って(笑)。
- 大井
- そうですよね。で、ご飯食べに行くってなったら良い所に食べに行くじゃないですか。
- 設楽
- そう。相当良いところに行ってると思う。
- 大井
- 自分が子どもの時に食べてたものと比べてもそうですけど、遊び方とかレベルが違うと思うんですよ。
- 設楽
- だって、番組とかで子どもが喜びそうなものをお土産にもらって帰ったりだとか、こういうのが好きだって言ったらそれをもらったりとか、あと駄菓子を紙袋まんぱんでもらったりだとかしてるから、ちょっと麻痺ってると思う。
- 大井
- これが普通だと思っちゃうでしょうね。
- 設楽
- 4歳で自分専用のDSとか持ってるし。ひとりっ子だからちょっとヤバい。
- 大井
- 引き締めていかないとマズイですよ。うちは他よりちょっとお金持ちだなって感じてるんじゃないですか。
- 設楽
- そうねえ。うちの子どものまわりは、環境的にも金持ちが結構いるんですよ。この前までハワイに住んでて、こっちにちょっといるだとか。送り迎えはベンツですとか。だからこそ、正月とかに多少海外に行っておかないとみたいな。仲間外れになっちゃうから。
- 大井
- それって、自分の育ってきた感性とちょっと違いますよね。うちは常に家にお菓子はなかったですからね。せんべいとかはあったと思うんですけど、子ども好みのポテトチップスとかなかったのに、嫁がそういうの好きだから常に置いてたりするんですよ。ジュースもあるし。
- 設楽
- あ、でもそこはちゃんと締めてるよ。うち、炭酸をまだ飲ませてないから(笑)。あと、うちの奥さんのほうがそういうのはすげー厳しいみたい。俺はスーパーとかに行って、「これ買って」とか言われると、別に大したもんじゃないから「いえーい」って買ってやるけど、「この前買ってあげたでしょ!」とか奥さんに言われる。にしても、俺の子どもの頃と比べたら、すごい贅沢だと思う。
- 大井
- そうなんですよね。自分の子がイヤな奴になっちゃうなって。
- 設楽
- イヤな奴にはなって欲しくない。でも大丈夫だと思うよ。そんなにイヤな奴にならないでしょ、大井くんが親だったら。
- 大井
- でも、わからないじゃないじゃないですか。
- 設楽
- 変な奴になっちゃったらイヤだよね。突出してどっちに転んでもあれだけど、普通にね。
- 大井
- 普通にいて欲しいですよね。
- 設楽
- 愛情を注ぐことらしいよ、やっぱり。花や木のように、ちゃんと真っ直ぐ育てるためには愛情という栄養がいるって。
- 大井
- 奥さんがダンナさんをたてていれば、子どももお父さんのことをバカにしないって言うじゃないですか。設楽さんのところはそういう関係性にはなってるんですか?
- 設楽
- たぶんなってると思う。文句とかあんまり言ってないんじゃないかな。
- 大井
- うちの奥さんもそういう気持ちではいるんですけど、すぐ俺と喧嘩しちゃうから、子どもがその間にギャーギャー泣くっていう一番イヤなパターンになってるんですよね。
- 設楽
- そういうのはあんまりないなあ。たまに面倒臭い感じになるときはあるけど、子どもの前で喧嘩っていうのはないかな。

それが目標になってくるかもな。娘の人気を得るって。
- 大井
- 子どもが将来「これになりたい」って夢を語るときが来るじゃないですか。女の子だから芸人になりたいっていうのはあまりないと思うんですけど、もしなりたいって言ったらどうしますか?
- 設楽
- 「やるぅ?」っていうね(笑)。やりたいって言ったらやればいいと思うけど、そんなに悪いものだと思ってないから。けど、無理じゃないかなって思う。女芸人って成功する例もあんまりないし。
- 大井
- 男より難しいですよね。男でなりたいって言われるより、女でなりたいって言われるほうがちょっと困りますよね。
- 設楽
- 困る。どうするんだろうなあ。
- 大井
- 15歳で高校行きたくないって言われたらどうします?
- 設楽
- 「行っといたほうがいいんじゃない?」って。「絶対友だちとかも出来るし、超楽しいからとりあえず行ってみてだね」って。普通に一回言いたいこと全部話すと思う。
- 大井
- 女の子で援助交際をしてたってなったら?
- 設楽
- そういうヤバイやつね(笑)。援助交際をしてたら、最低だなあ。それはマジですごい怒っちゃうな。ダメだよって。
- 大井
- 「なんでいけないの?」って。
- 設楽
- そのときは「なんでいけないのかじゃねえ!」って。もう、マックスの怒り。この人の言うこと聞かないとやべえってくらいの(笑)。ず~っと優しかったのにって。
- 大井
- そのころには「うるせえ、ジジイ」くらいのことは言いますよ。
- 設楽
- 「ジジイだと、テメエ」って(笑)。でもちゃんとした親父になれないと思うんだよな。だって自分のことが一番だもん。
- 大井
- それはもう確かにそうですよ。
- 設楽
- 休みでも家族と過ごそうとか、どっか行きたいなあとか思うんだけど、夜仕事が早く終わると誰かと飯食いに行ったりしちゃうもん(笑)。
- 大井
- そうですよね(笑)。じゃあ、娘が結婚相手を連れてきたらどうですか?
- 設楽
- まあ、気にはなるんだろうけど、自分の例もあるからね。変な芸人とか連れて来たらもう最悪。でも、そこはもう逆に安心かなって。だって、バナナマンの娘に手を出さないでしょ。
- 大井
- いや、それね、伊戸田さんとも話したんですけど、「芸人は絶対に手出しますよ」って(笑)。面白がって「イッタりましたよ」って。それにあと15年くらいしたら設楽さんは50歳くらいですよ。
- 設楽
- わからないけど、師匠クラスの娘にいくかって話ですよ。本気の交際はアリだとしても、軽くいきました!はないですよね。「私、オール阪神巨人の娘なんです」って言われたら、ちょっとああ……ってなるでしょ?
- 大井
- 確かにそうですね。でもわからないですよ、バンドマンとか劇団員とかね。
- 設楽
- でもしょうがないんだろうな。常にそれは思う。お風呂に入れてても何してても、男とセックスする日が来るんだなって。でもそれはしょうがないことでしょ。悲しい、確かに。でも、今はすげえ懐いてるし。しょうがないなって。まあ、好きな子はいるみたいだけど……。
- 大井
- そういうマセ方をするんですね、6歳で。
- 設楽
- うん、もう幼稚園に入った頃から、「好きな子いるの?」って聞いたりはしてるけど、いつも俺がけっこうな上位にいるから、これがポンっていなくなる時期が来るのかって思うと淋しいですね。
- 大井
- 思春期とかイヤじゃないですか? こっちは育ててるのになんでコイツに「うるせえ、ジジイ」って言われなきゃなんねえんだって。それすごく納得いかないんですよね。
- 設楽
- でもさ、「うるせえ、ジジイ」ってなると思う? 俺、格好ってすごく重要だと思うの。俺も大井くんも、格好はより若いほうに寄っていってるじゃん。娘が中高生になったときに、親父が中学・高校くらいのマックスみたいな格好をしてるわけじゃん(笑)。
- 大井
- そうですね(笑)。
- 設楽
- 例えばジーンズひとつ取っても、古着をわかってきたときにその最高峰を着てるわけだから、「イケてるな」ってくるんじゃないかなって。感覚が今と同じだったら。俺ら中高生に好かれたりしてるから、自分の娘が嫌うかなって(笑)。それが目標になってくるかもな。娘の人気を得るって。
- 大井
- 嫌われたくないって。
- 設楽
- 娘の人気を得るお父さんになるのが一個目標ですね。
- 大井
- 最後に一筆書いてもらうんですけど、「設楽さんにとってお父さんとは?」。娘のしたことや言ったことで感動したことありますか?
- 設楽
- 幼稚園の運動会ではじめて走ってる姿を見て、うわすげー!って。みんなでお遊戯とかでやってるときとか。
- 大井
- お辞儀しただけで、うちの娘できる!って思っちゃいますもんね。
- 設楽
- あと、最近奥さんのお手伝いをしたがるんですけど、そういうときもなんかいいですよね。
- 大井
- 娘さんの名前ってどうやって決めたんですか?
- 設楽
- 「ななは」っていうんですけど、4月生まれだから葉っぱの葉で、若葉とか乙葉とかを付けようって考えてて、七つの葉って書いて「七葉」にしたかったんですけど、画数的に「奈」のほうが良かったんで字は変えました。でも、逆から呼んだら「ハ(”)ナナ」だったんで、ああ、これでいいじゃんって(笑)。男だったら承太郎にしようかと思ってたんですけどね。
- 大井
- (笑)。
- 設楽
- 『ジョジョの奇妙な冒険』のね(笑)。


文=竹村真奈